大判例

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仙台高等裁判所 昭和26年(う)378号 判決

記録によれば本件起訴状には公訴事実として、「被告人は共和土木株式会社社員にして昭和二十四年二月頃より同会社請負に係る会津大川筋農業水利改良工事作業所資材係兼会計係として勤務していたものであるが同工事に従事する労務者の食糧に充てるため何等法定の除外事由もないのに同月頃より同年五月頃までの間別表記載の如く二十九回に亘り北会津郡川南村大字古館永田義次方外二十八ケ所に於て米穀生産者である同人外数人より同人等生産に係る粳精米合計百五十一俵三斗を工事協力米名下に代金合計六十万七千円にて買い受けたものである」と記載されてあり、その別表には年月日欄に昭和二十四年二月二十日頃外二十八回、場所並びに氏名欄に北会津郡川南村大字古館永田義次外二十八ケ所二十八名、数量欄に四俵外合計百五十一俵三斗、金額欄に一万六千円外合計六十万七千円と掲記されている。そして刑事訴訟法第二百五十六条によると、起訴状には公訴事実を記載すべくその公訴事実は訴因を明示してこれを記載しなければならず、訴因を明示するにはできる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならないとされているのである。

従つて訴因が特定していない限り起訴は無効であり、もし訴因が不特定の場合には、刑事訴訟法第三百十二条所定の訴因の追加又は変更等の措置によつても、これを追完して特定せしめることは到底許されないのである。言いかえれば刑事訴訟法第三百十二条は、起訴状記載の訴因が特定していることを前提として、公訴事実の同一性を害しない限度に於て、訴因又は罰条の追加、撤回又は変更が許されもしくは、その追加又は変更を命ずることができることを規定したものに外ならないのである。そしてここに訴因の追加撤回又は変更と言つても、起訴状記載の訴因が数個ある場合、その数個の訴因の範囲外で、これと同一性のない別個の事実を新たに附加し、或はその数個の訴因中の或るものを除外してしまうことを許す趣旨ではないのである。蓋し審判の対象は訴因であつて審判の範囲は、あくまでも、訴因の同一性を害しない限度において決定されるべきものであるから、もし検察官において起訴状に記載された訴因の範囲外の事実について審判を求めんとするならば、よろしくその事実につき新たに公訴を提起すべきであり、又反対に起訴状に記載された数個の訴因のうちの或る個数の訴因を撤回せんとするならば、公訴の取消の方式によるべきなのである。

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